ここには著者のもがきながら生きている瞬間瞬間が納められている。読者に対して頑張って生きようみたいな安易なエールを送ってこないからこそ、不思議と読んでいると元気づけられる。
答えは出ない、でも必死に悩み乗り越えようとしている姿がありのまま記されている。ペク・セヒによるノンフィクション作品。
こんな人におすすめ
- 生きるのがつらい
- 強い不安を感じる
- つい自分を責めすぎてしまう
あらすじ
気分変調制障害(軽い鬱症)を患った著者と担当の精神科医とのカウンセリングの会話がメインのエッセイ。なぜずっと辛いのか。子供の頃の話から仕事、人間関係・・・いろんな話をしてどうしたら気持ちが晴れるのかを模索していく。
感想
多かれ少なかれ抑うつ的な経験はしたことがあるんじゃないだろうか。なんとなくやる気がでない。学校が仕事が嫌すぎて行きたくない。今すぐ辞めたい。一日中寝ていてさらに無気力だ。なんて。もちろん自分にも似た経験がある、それも何度も。
他人の心のうち(それも闇)を赤裸々に見せらているようで、なんだか自分までも辛くなってしまう。けど、それと同時にああ、自分だけじゃなかったんだとなんというか安心感を覚える。1作目「死にたいけどトッポッキは食べたい」は著者の後書きにもあるように非常に中途半端なところで終わっている。無事に病を克服したとか、大きな転機が訪れて人生が好転していったとか、そうはならない。それがまたリアルだ。続きがきなったので次作である
「死にたいけどトッポッキは食べたい2」
も読んだ。こちらはけっこういろんな事件が起きて、ちょっとずつしかし確実に著者の考え方も変わっていっている。
実在する人間の悩みをそのまま覗いているからこその現実感を味わえるし、ドラマティックな展開が起きないのもとても現実的だ。
死にたいと思ってもお腹が空いてしまう。そんな人間の滑稽さがタイトルに表れていてすごいいと思った。
共感できない人にはとことん共感できない、あるいは理解できない内容かもしれない。
著者 : ペク・セヒ
翻訳 : 山口ミル
出版社 : 光文社
発売日 : 2020/1/30
なんとなく生きるのが辛い、モヤモヤした気持ちが残る人にはこちらの映画も参考になるかもしれません。
生きてるだけでいいはずなのに・・・映画「生きてるだけで、愛」を観て思うこと