思えば遠くに来たものだ。気づけば歩飲インタビューも10回目を迎える。節目ということで今回は特別編。歩飲の名付け親?とまことしやかにいわれている太陽民芸の亮太氏。今回は直接インタビューを行った。まずはいつもの定型質問によるインタビューをどうぞ。
目次
ホイナー(歩飲者)紹介
亮太[@ryotan_richman]
亮太です。あにぽんと呼ばれることもあります。
普段は高円寺にあるHooky Wookyという飲み屋で店長やってます。太陽民芸や他いくつかのバンドに参加、主にベースを担当しております。
歩飲の魅力
歩飲って自分にとっては散歩のハイグレード、いうなれば重散歩!軽度の運動(散歩)による気分の高揚にアルコールがブーストをかける訳ですから、そりゃ楽しいに決まってるんですよ!
あてどなくふらつく歩飲も気持ち良いけど、個人的には暗渠や遺構を巡りながら古に思いを馳せつつ、ってのがより好ましい。都会の街並みはアカデミックな刺激に満ち満ちている!
目的地までへの、さもすれば退屈なだけの移動時間をたちまちエンタメ化できるのも最高!ライブハウスから打ち上げ会場への僅かな時間に飲むお茶割りの美味さたるや…!
これから歩飲を始める人へのアドバイス
初めはクージー的なものを使うのが良いと思います。世間体気にせず飲めるし、夏は保冷効果も期待できるので捗ります。冬場は手袋が欲しいところですね。冷えた缶を片手に長時間歩飲してると手が悴んで地味にツラいっす。
歩飲におすすめのお酒
ズバリ!『宝焼酎のやわらかお茶割り』ですね。アッパー過ぎない酒を歩行のBPMに合わせて淡々と飲み進めるのが心地よいかなと思います。お茶割りはそんなテンションにぴったり寄り添ってくれます。
夏場は酒が温くなる問題って付きまとうと思うんですけど、お茶割りなら温くなってもしぶとく楽しめるのもおすすめできるポイントです。
本人広告枠
いつもは高円寺にあるHookyWookyという飲み屋でグラスに酒を注ぐ簡単な仕事に従事しております。お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
厳しい残暑も終わりやっと涼しくなってきた2023年の10月。PROM丹下氏に同行を願い私は高円寺へ向かった。駅から程近い場所にそのお店はあった。 亮太氏がやられているHooky Wookyだ。
ここはカレーとお酒が楽しめるカウンター8席ほどのとても落ち着ける空間だ。ポークビンダルーやマトンキーマなどマスターこだわりのカレーを、およそ週替わりで1種類提供しているという(売り切れ御免)。
ノーチャージで深夜まで営業しているのでおひとり様でも大歓迎とのこと。歩飲に疲れたらふらっと立ち寄ってみるのもいいかもしれない。
というわけで、ついに歩飲の実態へと迫る……と言いたいところだがただ楽しく飲んだだけであった笑。それではインタビューをどうぞ。
歩飲の実態に迫る!?対面インタビュー
外山鉛(以下「鉛」):歩飲するときは、つまみとか買う人ですか。 何を食べるんですか?
亮太氏(以下「亮太」):かわきものかな。
鉛:あー、ドライソーセージ?ソーセージはあんまり?
亮太:この間の土曜日にすごく久々に歩飲をしてたから今、どうだったかなと。どんな感じかと思い出している。
PROM丹下輝一郎(以下「丹下」):あと亮太さんって元々営業の仕事してたんですよね。 やっぱりこう、仕事終わりによくしたりするんですか?
亮太:仕事帰りというか休みの日によく歩飲するかなぁ。
鉛:あ、なるほど。
亮太:昼過ぎに呑んだりして、腹ごなし的に都心の方まで歩いたりとか。あとはこの間言ったような気がするんだんけど暗渠沿いに歩いたりとか(注 インタビューの数週間前に一度亮太氏と会っている)。
丹下:なので、結構距離を要する歩飲スタイルなんですね。
亮太:もともと散歩の延長みたいな感じで。ただ散歩しているだけだと手持ち無沙汰だから酒を片手にね。それが始まりだった気がする。
鉛:みんなの歩飲するシチュエーションを知りたかった。それはインタビューでの質問項目で聞いてなかったからなぁ。
丹下:でも各々は、確実に歩飲のスタイルを持ってるよね。やっぱ生活圏内にある建物の場所とかわかってるからさ。過去にインタビューしたホイナーにもゴミ箱がここにあるとか、ここでこれくらいの歩数とスピードで進んでいけばここら辺で飲み終えられるとか。
鉛:店に行くまでに歩飲する人もいるじゃん。以前インタビューしたSoukのひさねさんは「(店への移動中に歩飲するのは)日常だから 」って言ってた笑。1件目から2件目行く間に歩飲してるって言ってて、さすがひさねさんだなと。
亮太:それは自分もそう。今だったら最寄りの駅まで歩いて30分ぐらいかかるから、ちょうど一本飲めるとかね。
丹下:あーなるほど。チャンスきた笑!
こういう気候の状態のことを、昔の自分は「歩飲最適化」って呼んでた。(亮太)
鉛:なるほど。散歩メインと飲酒メインの歩飲が分かれそうですね。
丹下:酒を飲むために飲むのと、
鉛:散歩のついでで飲むっていう派閥争いが。
丹下:あと今まで歩飲のインタビューをしてて意外だったのは、みんな飲み代を安く済ませたいからっていう意見はそんなにない。
鉛:みんな散歩が好きなんだ。基本ね。
丹下:そうだと思うよ。基本ベースはね。
鉛:酒飲みたいなら家で飲む方がいい。 酒だけ飲みたい人は家で飲むよなぁ。
亮太:季節感が大事というか。
鉛:あーやっとやりやすいですね。 ちょっと肌寒いぐらいの方がね、体があったまる。(インタビュー当時は10月の後半)夏とかは暑すぎてちょっとな。
亮太:今いい季節ですよね。
亮太:こういう気候の状態のことを、昔の自分は「歩飲最適化」って呼んでた。
一同笑
鉛:今の季節が一番よくない?
丹下:なんか春とかってさあ、暑くもあり寒くもない?秋って1番(適している)。
鉛:確かにね。春もするけどな。春はテンションが上がるから。
丹下:確かに夏はしてなかったなぁ。
鉛:しないよね。暑すぎだよこれ。ここ数年の問題。
やっぱ同時多発的だよな歩飲て。(鉛)
鉛:歩飲は名付けの親が違う人なんですもんね。実践者として亮太さんはやられていると。
亮太:当時二人でよくやってて。で、一緒に歩飲をしていた幼馴染が言い始めたはず。
丹下:どういうタイミングで使い出したんですか?なんかポロっとこう、2人飲んでるとき言ったんですか?
亮太:当時LINEだかメールだかTwitter(現X)かなんかの文面でそいつが言ってような記憶がある。
丹下:なるほどね。
(来客者Aが入店)
亮太:(来客者Aに向かって)歩飲のインタビュー受けてるんですよ。
来客者A:インタビュー!?
亮太:なんか歩きながら缶のお酒飲んだりする行為って・・・あんまりやらない?
来客者A:超やってます。
亮太:ホイナーさんがいた。
来客者A:名前もつけていますよ。その行為に歩飲(ぽいん)っていう名前つけてますよ。「歩く」に「飲む」って書いて。
鉛:お、すごいすごい。あーなるほど。 ここにもホイナーがいた。それは自分で名付けられたんですか?
来客者A:たぶん。駅から自分の家が12分ぐらいあるんですけど。家帰るまでの間に1缶350ml飲むっていうことを課してた時期がある。
鉛:ストイックだ。
丹下:ストイックホイナー現る。
来客者A:近所のコンビニでお酒を一本買って、家の近所の自販機のゴミ箱に本当はダメなんですけど、捨てて何事もなかったかのように家に帰る。で、その行為に「ぽいん」って名付けてた。
亮太:いろんな呼び方があるんだ。文字は一緒だけど。
鉛:文字は一緒ですね。読みが違う。方言みたいなことですね。
来客者A:ちょっとボインみたいな感じでいいなと。
鉛:やっぱ同時多発的だよな歩飲て。
丹下:でもホイナーは増えたと思うなぁ。その、パンデミック(コロナ)があって。
鉛:歩飲バブルがありましたからね。
あれはだからもう、「座飲(ざいん)」(丹下)
亮太:当時リモートワークやってる頃は、毎日お昼ぐらいまでになんとなくメールとか全部最低限で済まして携帯持って外に出歩いて、死ぬほど歩飲をしてました。ほぼ毎日やってましたよ。
来客者A:それで思い出したんですけど、忘れられないことがあって。うちの近所をいつものように歩飲してたら、 前歩いてるおじさんがなんか、もちろん背中しか見えないんですけど。すげえ明らかに怒っているんですよ。嫌なことがあったんだろうなぁって。普通のスーツ着たサラリーマンのおっさんなんですけど、すんげえ怒ってる感じなんですよ。ガツガツ歩いて。
で、でもふって見たらそのオジさん、やっぱりこう、片手に缶チューハイ飲みながら怒って歩いて。なんかすげえ気持ちはわかるなあって。多分家に持ち込まないんだろうな、この人はっていう。
鉛:なるほど、そこでストレス解消というか。
来客者A:家帰る頃にはもう1回終わらせる感じなんだろうな。
丹下:そういう背景を持ってる人もいると。
鉛:哀愁がありますね。 なるほど。
丹下:怒歩飲
鉛:今はやられないんです?
来客者A:やってますね。
鉛:いいですね。現役ですね。
丹下:もうなんか習慣みたいな?
来客者A:なんかそうですねぇ。
鉛:やっぱ習慣にはなるよね、歩飲って。
来客者A:歩いているのがちょっとなんかちょうどいいっていうか。例えばその、駅でこう飲むのもいいと思うんですけど、なんかでもそうじゃなくて、歩いてるってのは大事かなと。
鉛:なるほど
丹下:後ろめたさみたいなものがないみたいな?
来客者A:いや、ありますあります。
鉛:確かに駅のベンチ勢もいるもんな。
丹下:あれはだからもう、「座飲(ざいん)」
鉛:座飲は普通の行為だよ。みんな大体座って酒飲んでるよ。
丹下:ザイナーでしょ、あれは。
鉛:駅のホームで開けちゃう。そういう人もいるよね。
丹下:そこでずっと飲んでいるってのは、ちょっとホイナーとはまた違うアティチュード。
鉛:うん、確かに家では飲みたくないというか。あれなんだろうね、 家庭に居場所がないのかもね。
丹下:多いと思うよ。いかに家に帰らないかを考えた結果が歩飲かもしれない。
突発性歩飲(亮太)
鉛:あ、印象に残ってる歩飲。歩飲をして変わったこととかあれば聞いてみたい。ってそんなのあるかぁ!?ないからいいんじゃないのか。そんな意識高く歩飲をしてもダメだよ。
鉛:印象に残ってる歩飲ってありますか笑?ベスト歩飲。
亮太:なんだろうな、印象に残る歩飲。
丹下:普段と違うとこでやったからよかったっていうのはある。行為が一緒でもさ、普通に今まで見てる景色が違ったらそれはいい。
鉛:だいたい家の近所歩くから。
亮太:基本は変わり映えしないと。
鉛:そうですよね。
亮太:うん、印象に残ってる歩飲っていうのははあんまりないのかな。
丹下:なんかサラリーマン時代にたまたま起こった歩飲とかあったりするんですか?でも基本休みの日か。
亮太:突発性歩飲
丹下:突発性歩飲!?
鉛:なんだよ突発性歩飲って。
亮太:基本的にはあんまりないかな。スーツ着てたから、その格好で歩飲することはあまりなかった。早く脱ぎたいし。
丹下:そうですよね、早く家帰りたいですよね。
来客者A:そういう時の歩くスピードってどんななんですか?
亮太:非常にスローですね。割と景色を楽しんでいるから。自分が一番好きなスタイルが・・・いわゆる暗渠ってあるじゃないですか。例えば、遊歩道だとか、 裏路地とは言わないですけど、元は川だった暗い場所とか。なんかやたら蛇行したちょっと面白い場所。そこを歩きながら、飲むのは結構楽しみの1つ。だから、すごいゆっくり歩く。暗渠を愛好する人は結構いると思う。
来客者A:ブラタモリじゃん。
亮太:ブラタモリに酒を加えたノリは確かに、ある。
鉛:あー、なるほど。確かにブラタモリも緑道を歩くっていうか、なんか川の特集ありましたもんね。やっぱ戦後に東京のちっちゃい川は全部フタして、下水道が足りないからつって、みんな暗渠にしちゃった話は過去の放送であったな。 暗渠は楽しいですよね。
丹下:まあまあ、あと、迷わないしね。なんか道沿いに歩いておけばとりあえず。
亮太:絶対なんかどこかしらに着くしね。
(来客者Bが入店)
亮太:Bさんは缶のお酒を買ってあんまり散歩とかしないですか?
来客者B:最近あんましないね。いや、以前はやってたけど。
鉛:おお。
来客者B:なんか年齢も年齢だし笑
亮太:何言ってんすか。その行為ってなんか名前つけてました?
来客者B:名前とかあんの!?いや、別に普通に勝手に飲んでるだけだけどな。なんかあんの?なんか!?・・・いや、ごめん、俺ちょっとシーンに乗れてないかもしれないな。なんかあんの。
鉛:一応、歩くで飲むと書いて歩飲という名前で読んでまして。もしくは「ぽいん」。
来客者B:ボインに近い感じの。
鉛:ぼいんって呼んでる人もいるのかもしれないな。散歩しながら酒を飲む人にインタビューを最近してて、 それがちょうど10回目なので、一応歩飲の名付け親なんじゃないかという亮太さんにインタビューしているところです。
来客者B:ポイナー?ホイナーとして?
丹下:すごい!そうですね。今、歩飲をする人をホイナーっていう呼び方をしてまして。
来客者B:ああ、そういうふうにすでに呼んでいるんですね。
鉛:そうです。
亮太さん:一応歩飲と言い始めた人としてインタビューを受けてるんですけど。たぶん(前述の)幼馴染が言い出しっぺなんじゃないのかなって話をしてて。
来客者B:インタビューってことは、なんか出版社かなんか?
鉛:webマガジンみたいな。趣味でただやってる感じで。これからちゃんとビジネスにしようかなと笑
来客者B:流行るかなー歩飲
鉛:でも酒とつまみって雑誌を出しているところも、「酒とつまみ社」を設立しているわけだから、うちらも「歩飲社」を作れるんじゃないかと。
来客者B:無理やり概念に名前つけちゃうのいいっすよね。なんかあの、別の人で持ち運び用の椅子を持って座って酒飲むってだけのことを「チェアリング」って呼んでる人もいて。
鉛:あーやっぱみんな知ってるんだよね、チェアリング。そう、チェアリングがあんな流行ってるのが悔しくて笑。
来客者B:なんか、そんな馬鹿みたいな概念あるんだって思って。ただ座って酒飲んで。
丹下:まあでも確かに。そのチェアリングがいけるなら歩飲もいけるんじゃないかって4月ぐらいにちょっと話してて。
鉛:この重生活マガジンっていうのは、僕はバンドをやっていて基本僕の友達の周りのバンドに歩飲の魅力とかアドバイスとかを聞いて回ってて。それで10回目なので、亮太さんにインタビューしてる感じなんです。
丹下:だから、今回の10回目のインタビューも一応、歩飲名付けの親であるマスターオブ歩飲に1回挨拶しなきゃという、そういったこともあり、いまこうしてインタビューしているんです。
亮太:元祖とか本家とかそういう問題ですよね。
来客者B:ま、そうだね。 元祖ニュー担々麺みたいな、そういうほんとか?みたいな。
鉛:確かに誰が元祖かってなりますよね、これ。まあ、でもほんと厳密に言ったら同時多発的だからね。こういう誰でもやってるし、誰でも思いつきそうな名前でもあるし……
結論
歩飲の名付け親ではなかった。
もしかしたらもっと前から歩飲と呼んで散歩しながらお酒を飲んでいた人が人知れずいたのかもしれない。
突然だがLINUXをご存知だろうか。パソコンに詳しくない人にはあまり馴染みがないかも知れない。
パソコンにはOS(オペレーティングシステム)といわれるコンピュータ全体を制御するソフトウェアがある。WindowsやmacOSなどが有名だ。それ以外にもLINUXと呼ばれるオープンソースのOSがある。
オープンソースとは、プログラムの設計図であるソースコードが誰でも自由に閲覧・改変・再配布できるソフトウェアのことをいう。誰でもソースコードを確認して、自分のニーズに合わせて改良することができる。LINUXも世界中のエンジニアや開発者によって改良・拡張が行われ、現在では、サーバーやスマートフォン、IoT機器など様々な用途で利用されている。
何が言いたいかというと、歩飲もきっとオープンソースなのではないだろうか。誰が元祖だとか誰かがそのネーミングライツを独占するわけでもなく、みんながみんなのペースで飲んで歩いて歩飲を名乗ればいい。自由に改良を加えて拡張して、各々がやりやすいスタイルを確立していく。
お酒を片手に散歩をすればあなたももうホイナーなのだ。これからもホイナーへのインタビューは続く。